けいぼーです。今回の商品を学ぼうのテーマは、「ポンプって原理はみな同じなの?」です。

そもそもの話ですが、ポンプの原理ってみんな同じだと思っていませんか? でも、実は違います。分かりやすい例で、「灯油ポンプ」、「注射器」、「手押しポンプ」、そして現代の産業でよく使われている「渦巻ポンプ」の原理を比較してみましょう。今回は、このテーマを考えてみます。
灯油ポンプの原理
灯油ポンプとはこのようなものです。
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灯油ポンプの使い方は、ポリタンクから暖房器具のタンクへ灯油を移すとき、ポリタンクを高い位置に置いて、始めにポンプ部を数回押してポンプ部と管を灯油で満たせば、灯油は流れ続けます。
灯油ポンプが水を吸い上げる原理は、サイホンの原理です。また、灯油ポンプの分類は、容積式ポンプになりますので覚えておきましょう。

サイホンの原理は、古代エジプト時代から知られています。
ストローの中が水で満たされている場合、もともと水の入っているコップの水面とストローの高さに差があると、水は低いほうに流れ続けます。 これをサイホンの原理といいます。
さて、ここで問題発生です。
サイホンの原理は今まで、大気圧の利用と説明されてきました。ところが、2010年に、オーストラリア・クイーンズランド大学の物理学者、スティーブン・ヒューズがそれは誤りであると指摘し、正しくは重力によると指摘したのです。
しかしながら、ネットで調べた範囲では、重力説で確定しているわけではなく、大気圧と重力との合力説もあり、まだまだ議論が続くようです。
注射器の原理

次に、注射器を見てみます。注射器の原理は何でしょうか。サイホンの原理と関係はあるでしょうか。
注射器の原理は、ボイルの法則です。ボイルの法則とは「温度と質量が一定のとき、気体の圧力 p は体積 V に反比例する」というものです
次のような式で表します。
pV = k(一定)
一定数の気体分子が含まれている注射器のピストンを押すと、気体分子が動くことができるスペースが減少します。 したがって、気体分子が注射器の壁に、よりたくさん衝突します。 その結果、注射器の中に入っている気体の圧力が増加します。
このように、注射器の原理はサイホンの原理とは全く違う、ボイルの法則でした。分類でいえば、これもやはり、容積式ポンプになります。
現在の注射器の原型を考案したのは、フランス・リヨンの外科医シャルル・ガブリエル・プラヴァーズだといわれています。それまでの浣腸器を改良して、先端に中空の針をつけた注射器を発明したのは1851年のことでした。

しかし、この注射器は、内筒に刻まれたネジ山に沿ってハンドルを回しながら薬液を注入するというものでした。片手で操作することができないため、どうしても注入が不安定になり、実用性には乏しいものでした。
その2年後にプラヴァーズの注射器の欠点を克服して現在の注射器に近いピストン式の注射器を開発したのが、イギリス・エディンバラの開業医アレクサンダー・ウッドでした。彼がモルヒネを皮下注射して、世界で初めての局部麻酔に成功したのは1853年のことで、ちょうど日本ではペリーが来航した年でした。
手押しポンプの原理
それでは、次に手押しポンプについて調べてみましょう。こんな形をしています。

手押しポンプの原理は大気の原理です。
ストローでジュースを飲むときのことを考えてみましょう。

ストローでコップからジュースを吸うと、飲み物が口に入ってきます。
これはなぜでしょうか。
これは、ストローの中の空気を吸うと、ストロー内の気圧が下がるので、その下がった気圧の分だけジュースが押されて口に入ってくるからです。
これと同じように、大気圧がポンプの中へ水を押し上げるのが、手押しポンプです。

手押しポンプの歴史は相当に古く、紀元前3世紀のギリシャ人、クテシビオスという説があります。クテシビオスはエジプトのアレキサンドリアの人です。
ただし、「大気圧の発見」にまでは至らなかったようです。
トリチェリーの真空
さて、それから時代が下って、手押しポンプは鉱山で鉱石を掘り出すときに、地下水をくみ出す作業に使われるようになります。ところが、不思議なことが起こります。深さが10メートルを超えると、ポンプは水をくみ出せなくなってしまうのです。
その問題を解決したのは、ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)の晩年の弟子だったエヴァンジェリスタ・トリチェリ(1608~1647)でした。
トリチェリの考えは、水をポンプでくみ上げられるのは、空気の重さによって生じる大気圧で押されているからだと考えました。このことは、逆に、ポンプが水をくみ上げる限界は、大気の圧力と水の柱の重さが同じになる時に違いない、と考えました。
1643年、トリチェリは水の柱の代わりに、同じ体積で水よりも13.6倍も重い水銀を使って実験をしました。一端を閉じたガラス管に水銀をいっぱいに入れて、空いている他の端をふさぎ、閉じているほうを上に立ててから下の口を空けます。すると、ガラス管の水銀は液面から約76センチメートルの高さに落ちたのです。

ガラス管の上部に空間ができましたが、そこにはもともと水銀があったので、空気はありません。真空ができたと考えました。ただし現在の科学からすると、少量の水銀の蒸気があります。
これは水銀の表面を大気の圧力が押しているからです。
では、水銀の代わりに水でこれと同じことをしたら、水はどこまで上がってくるのでしようか?計算をしてみましょう。
水銀の密度は水の13.6倍なので、
76cm×13.6=1033.6cm≒10.3m
そう、大気の圧力を利用すると10mも上がってくるのです。
これが有名な「トリチェリーの真空」です。
渦巻ポンプの原理
時代は下って産業革命の時代になると、様々なポンプの理論が発表され、製品が完成しています。渦巻ポンプは、1818年にアメリカで製造されました。
渦巻ポンプはこんな形状をしています。

左側のフランジが吸込み口で、ここから流体が入ってきます。胴体の部分はケーシングといい、中にインペラー(羽根車)があり、回転します。
最初に、呼び水口から水を注入し、満水にして隙間を埋めて配管内の気密性を高めます。

運転を始めますと、渦巻ポンプは、水を送り出すために、吐き出し作用と吸い込み作業を同時に行います。
遠心力の原理
吐き出し作用については、雨の日に傘を勢いよくクルクルと廻すと、傘の先端からしずくが勢いよく飛んでゆくことを思い出してください。


渦巻ポンプの吐出し作用は、これと似ていて、羽根車の回転で発生した遠心力の原理を利用して水を送り出します。

- インペラー(羽根車)
- シャフト
- 吸込み口
- ケーシング
- 吐出し口
大気の原理
一方、ポンプの中心部分は、大気圧よりも低い真空状態になります。水面には大気圧が働いていますから、水は圧力の低いポンプの中へ押し上げられ、吸い込み作用を行います。
渦巻ポンプの吸い込み作用は、大気の原理です。
このように渦巻ポンプは、羽根車を回転することで、遠心力と真空を生み出し、吸い込みと吐き出しという2つの作用を同時に行い、これらの作用により水を低いところから高いところへ上げることができるのです。
渦巻ポンプは、非容積型ポンプと呼ばれ、その中の遠心ポンプという分類になります。
ポンプには容積式と非容積式がある
容積式ポンプ
容積式ポンプは、一定容積内にある液体に圧力を加えてエネルギーを付与する仕組みを持っているポンプの総称です。容積式ポンプの特徴には、以下のようなものがあります。
・自吸能力が高く、ポンプ内に液体がなくても吸い上げることができる
・吐出能力が高く、一定の吐出圧・流量を確保できる
・非容積式ポンプと比較すると送液量が少ない
非容積式ポンプ(ターボ型ポンプ)
ケーシング内で羽根車(インペラー)を回して液体にエネルギーを与えるポンプを総称して「非容積式ポンプ」と呼びます。非容積式ポンプには、以下のような特性があります。
・高速回転により比較的連続流になる
・吸込、吐出揚程は比較的低い
・負荷によって流量が大きく変動する
・定量性が低い
ポンプの種類一覧表
●容積式ポンプ
(1)往復動ポンプ
a)ピストンポンプ
b)プランジャーポンプ
c)ダイヤフラムポンプ
(2)回転ポンプ
b)偏心ポンプ(ベーンポンプ)
c)軸ポンプ(ねじポンプ・スネークポンプ)
●非容積式ポンプ
(1)遠心ポンプ
a)タービンポンプ・セントヒューガルポンプ(単段・多段)
b)渦巻ポンプ(単段・多段)
c)渦流(かりゅう)ポンプ
d)水中ポンプ
(2)プロペラポンプ
a)斜流ポンプ
b)軸流ポンプ
●特殊型ポンプ
(1)噴流ポンプ
(2)エアリフトポンプ
(3)水撃ポンプ
まとめ
今回は、ポンプの原理を見てきましたが、すべて同じではありませんでした。
灯油ポンプはサイホンの原理でした。注射器はボイルの法則でした。手押しポンプは大気の原理でした。渦巻ポンプについては、遠心力の原理と大気の原理でした。
このようにポンプの原理は同じではないという結論に至りました。