けいぼーです。ここは、貿易に欠かせない『商品を学ぼう』のコーナーです。         今回は「ツーリング工具」です。

出展:pixabay.com

ツーリング工具とは

ツーリング工具は、ドリルやエンドミル、リーマー、センタードリルなどの切削工具を保持するもので、「保持工具」と呼ばれます。

上の写真がそのツーリング工具の1例です。

それでは、ツーリング工具はどのような機械で使われるのでしょうか。それは、フライス盤やマシニングセンターという工作機械で、こんなイメージです。

出展:日経クロステック

これは汎用フライス盤です。工具(エンドミル)をご覧ください。その上の部分が、ツーリング工具です。汎用フライス盤の場合には、ミーリングチャックがよく使われます。

さて、今、切削工具とツーリングと機械の主軸は直接つながっていますので、主軸が回転すると、ツーリングと切削工具も同時に回転して、金属の切削加工が可能になります。

工作機械主軸・ツーリング・切削工具を図式化すると、次のようになります。

出典:けいぼー

エンドミルの働き

ここでは、エンドミルの働きを見てみます。

ドリルは穴を空けるための切削工具で、日曜大工でも使いますので、ご存じのことと思います。それでは、エンドミルという工具を説明できるでしょうか。

エンドミルはドリルによく似ていますが、ドリルとは動きも働きも違います。ドリルの動きは、下方向に直進して、穴を空けるだけです。ところが、エンドミルは、左下の写真のように、先端を前後左右に動かして、平面を平滑に仕上げることができます。

また、右の写真では、エンドミルは側面の刃で切削加工をしています。

このように、穴空け専用の直進するだけのドリルと違って、エンドミルは平面を平滑にしたり、側面を切削したり、複雑な加工をします。

出典:けいぼー

       端面で平滑な面を加工中       端面と側面の加工中

シャンク・ツールホルダ・切削工具の種類

こちらは、マシニングセンタに取りつける場合の、「シャンクの種類」、「ツールホルダの種類」、「切削工具の種類」をまとめたものです。

出典:けいぼー

上のシャンクはマシニングセンタのシャンクです。汎用フライスのシャンクはナショナルテーパシャンク(NTシャンク)です。

(ツールホルダの名称については、各メーカーで独自のネーミングをしておりますが、ここではこういう表現で統一致しました)

ツールホルダの種類

ツールホルダの種類についてもう少し詳しく見てみましょう。

ミーリングチャック

出典:日研工作所

ミーリングチャックは、業界最大手の日研工作所が1963年に開発したものです。当時はモールステーパの引きネジ式のエンドミルが主流で使いにくかったそうです。日研のミーリングチャックの登場により、ストレートシャンクエンドミルが開発され、日本だけでなく全世界の工業会の発展に貢献しました。

そもそも、ミーリング加工とは何でしょうか? フライス盤のことをミーリングマシンと呼びますので、ミーリング加工はフライス加工です。

さて、ミーリングチャックが切削工具を保持する仕組みは、強力な把握力と高い耐久性を生み出すマルチローラシステムにあります。切削工具をストレートコレットに挿入し、ミーリングチャックにセットします。コレットは日研独自のストレートコレットです。

ERコレットチャック

出典:けいぼー

次に紹介するのは、ERコレットチャックです。

上の写真のようなテーパー角が16°のERコレットは、1972年、スイスのレゴフィックスが市場に投入しました。以来、世界中の工業界で広く使われています。ドイツの工業規格DIN6499/ISO15488が適用されているコレットです。

ただし、実際に日本のツーリングメーカーが供給するコレットは、ERコレットによく似ていますが、メーカー毎に少しずつ仕様が違い、互換性がありません。

例えば、日研工作所のSKコレットは、テーパ角は8°です。また、大昭和精機のニューベビーコレットは12°、ユキワ精工は16°、MSTコーポは6°です。このように各社で違いがありますから、商品を切り替える際には注意が必要です。

参考までに、各社の名称と仕様を調べてみましょう。

メーカー名商品名コレット名テーパー角互換性画像
日研工作所スリムチャックSKコレット8°
大昭和精機ニューベビーチャックニューベビーコレット12°
NTツールコレットホルダFDCコレット16°/12°
アルプスツールコレットホルダARコレット16°
ユキワ精工スーパーGIチャックEYコレット16°
MSTコーポコレットホルダスプリングコレット
聖和精機コレットチャック高精度コレット16°
共立精機コレットチャックERコレット16°
九州工具コチャッククンERコレット16°
出典:けいぼー

焼きばめホルダ

このホルダは、ホルダ先端部を加熱し、熱膨張させ、そこに工具を挿入します。その後、ホルダを冷却収縮させて、工具を把握する方式です。

この方式のメリットは、コレット不要で、構成部品数が少ないこと、高剛性、高精度な工具保持が可能なことです。また、高振れ精度・高剛性保持により、工具寿命の安定化と延長が期待できます。

ただし、専用の加熱装置が必要です。

出展:MSTコーポレーション

サイドロックホルダ

出典:大昭和精機
出典:けいぼー

右のエンドミルをごらんください。シャンク部にフラット部があります。これをウェルドンフラットと呼びます。このフラット部分を側面からネジで締め付けてロックするホルダがサイドロックホルダです。

工具の抜け落ちを防止し、コレットも使用せず構造がシンプルといった特徴がありますが、使える工具がウェルドンフラット付き工具に限られます。

ハイドロチャック

出典:大昭和精機

ハイドロチャックは、油圧チャックともいい、油圧の力によって工具を締めつけて保持します。ストレートシャンクを持つ切削工具を保持し、コレット不要です。

取付精度が高いため振れ制度が良く、剛性が高いのが特徴です。また、リーマ加工などの高精度加工に適しています。

力がいらず簡単に着脱することができるので、作業者の熟練が不要です。コンパクトで振れ精度が良いといった特徴があります。

【まとめ】ツーリングメーカー比較表

ここでは、いままで見てきたツーリングを比較表にしてみました。ネットで調べた範囲ですが、かなりユニークなはずです。もしメーカーが生産しているのに掲載されていないことなどがあった場合はご容赦ください。

ツーリング種類ミーリング
チャック
ERコレット
  チャック     
焼きばめ
ホルダ
ハイドロ
チャック
 サイドロック ホルダ
チャック本体
コレットなしなしなし
メーカー・日研工作所
・大昭和精機
・NTツール
・ユキワ精工
・アルプス
・聖和精機
・共立精機
・日研工作所
・大昭和精機
・NTツール
・ユキワ精工
・アルプス
・聖和精機
・共立精機
・九州工具
・マンヨー
・Willwell
・Vertex
・ハイマー
・レゴフィックス
・MSTコーポレーション
・日研工作所
・大昭和精機
・NTツール
・ユキワ精工
・ハイマー
・マンヨー
・日研工作所
・大昭和精機
・NTツール
・サンドビック
・イスカル
・マパール
・日研工作所
・大昭和精機
・MSTコーポ
・セコ
・聖和精機
・九州工具
・マンヨー
・Winwell
本体シャンクNT/BT/HSKBT/BBT/HSKBT/BBT/HSKBT/BBT/HSKBT/BBT/HSK
工具・エンドミル
・ドリル
・フライス
・エンドミル
・ドリル
・フライス
・エンドミル
・ドリル
・フライス
・エンドミル
・ドリル
・リーマー
・エンドミル
・ドリル
・フライス
出典:けいぼー

今回は主にマシニングセンタで使われているツーリング工具について、ネットで調べられる範囲で調べてみました。

切削工具を保持するチャック・ホルダ、およびコレットには、いろいろな種類があることがわかりました。高精度加工のためには、トルク伝達力、工具保持力、剛性、びびり、工具脱落性、工具交換のしやすさなど、さまざまな点をチェックして最適なツーリングを選定することが必要であると痛感しました。

本記事が、ツーリング選びの参考になりますように。

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